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2019年5月

2019年5月12日 (日)

ユニークな「慰安婦問題」の映画、『主戦場』

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(写真左・映画のプログラム、写真右・映画『主戦場』のチラシ)

The Main Battleground of The Comfort Women Issue

これは日系アメリカ人ミキ・デザキ氏の初映画監督作品で、「慰安婦」問題の真相に迫る映画である。

「慰安婦」問題に対して何故アメリカ人が映画までつくりたいほどの関心を持ったのか?

デザキ監督の曰く、「慰安婦」問題に関心を持ったのは元朝日新聞記者の植村隆さんが「ネトウヨ」と呼ばれる人から中傷されている話を聞いたから。また、アメリカの報道は「慰安婦問題」に対して「20万人の女性たちが強制的に性奴隷にされていた」でありこの問題に論争があるとは思わなかった。歴史修正主義者と呼ばれる人々が「アメリカこそが歴史戦の主戦場だ」というのを聞いて、アメリカ人として興味をもった」というのだ。

 

映画はまず、「慰安婦問題」のいくつかの論点を取り上げて肯定、否定論両者の見解がスクリーンに展開される。

 

<慰安婦の人数について>

先ず、歴史修正主義者は「慰安婦」の数が200,000という点に噛みつく。あまりにも多い数ではないかと。

ケント・ギルバート(日本のテレビタレント、カルフォルニア州の弁護士)は「もし左翼の主張が真実なら慰安婦たちが1日に20回もセックスを強要されたとすれば…」、

藤木俊一(テキサス親父のマネージャー)「1日に20回とか30回とか…最近では50回、強要されたと。…すぐに(慰安婦が)1000万人位になるんですよ。(日本軍は)150万人しかいないのに」

ケントギルバード「日本兵全員が単純計算でも1日6回のセックスしなければ、それも毎日しなければ計算が合わない」

 

ナレーション~20万という数字はどのように算出されたのか

 

吉見義明(歴史学者)「陸海軍軍人の数は最大350万人。日本軍は100人に1人の割合で慰安所を設置する基準なので3万人という数字が出る」

渡辺美奈(アクティブミュージアム『女たちの戦争と平和資料館』(wam)館長)「長い戦争で交替もあった…」

吉見「仮に半分入れ替わったとすると、4万5千で、全体で1度入れ替わったとなると6万という数字が出る、まあ最低で5万くらいかな」

ユンミヒャン(韓国挺身隊対策協議会)「当時慰安所の管理者たちの話の中に『29対1』という記録がありそれに基づいて研究者たちが約20万と推定している。私達は研究者による数字を用いているに過ぎない」

渡辺美奈「フィリッピンやインドネシアの部隊に慰安婦がいなければ自分たちで慰安所をつくっちゃう…そうなってくると『100人に一人』ではなくなってくる」

 

ナレーション

「アクティブミュージアム『女たちの戦争と平和資料館』は合計数を出すことには慎重だ。…この議論の結論から分かることは、慰安婦についての実際のデータは存在しない。よって概算の言及には注意が必要だ

 

<歴史教育 HISTORY EDUCATION

杉田水脈「ニッポン人は『まあこんな問題は嘘だろう』とあまり信じている人はいないと思う。『強制連行なんてやりっこない』というのが一般的になっているにもかかわらず、いまだ世界中ではナチスドイツのホロコースト…に匹敵する戦争犯罪だと世界中の人が信じ込んでいる」

 

ナレーション~性奴隷なんて話を日本人は信じていないと否定論者は言うが日本人の多くが問題自体を知らない事を忘れてはいけない。…

 

中野晃一「1997年以降中学校の歴史教科書が慰安婦の記述を含むと報じられた時から中学は義務教育ですから…右翼にとっては大ごとだった。彼らはいくつか団体を結成した。歴史修正主義の反動が始まった。安倍首相は未だ当選2回の若い国会議員だった。自民党議員中心になって議員団体を結成した。」…『日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会』というような」

 

ナレーション~「教科書議連」としてもしられている

 

俵義文「このまさに自民党が言った歴史認識をつくる、日本の戦争を正当化するような歴史認識を国民に定着するための国民運動組織として、学者を中心とした組織ができたのが『新しい歴史教科書をつくる会』なんですね」

稲田朋美(国会での発言)「総理は若手議員の頃から教科書から慰安婦の記述を削除して日本の名誉を回復するために尽力していた」

 

ナレーション~1997年中学校の全てに慰安婦の記述があったが2012年にはその記述が完全に削除された

 

中野晃一「朝日新聞を無理やり黙らせ、政府見解に屈させることに成功したて大胆になった安倍氏は更に国際的キャンペーンに関与、特にアメリカに注目し朝日新聞が広めた「誤った」認識を変えさせようとした」

安倍晋三(国会での発言)「政府としては客観的な事実に基づく正しい歴史認識が形成され、ニッポンの取り組みが国際社会から正当な評価を受けることを求め、戦略的な対外発信を強化しなければならない」

 

ナレーション~2014年日本の外交官がアメリカの教科書会社を訪問し、慰安婦問題に関する記述二段落分の削除を要求した。聞き入れられず総領事館の職員が執筆者―ハーバードーハーバードシグラー氏を突撃訪問し「アメリカの学生の頭の中を汚染している」と非難した。

2017年日本政府は公式な意見書を提出し目良浩一氏のグランデール訴訟に支持を表明した。信じられない事に慰安婦像の撤去は『日本の国益の中核である』と書かれている。何故安倍氏と右翼は慰安婦問題をここ迄重視するのか。

(以上は『主戦場』プログラムより引用)

 

否定論者に発言の場を与えてしまう…懸念はない

 

「慰安婦」の人数、強制連行、性奴隷、歴史教育という主論点について、肯定論者、否定論者双方の意見が様々な資料映像とともにスクリーンで展開されて、観客は引き付けられる。

私自身、金学順さんが「あまりに悲しくて自分の口からは話せない」と語る映像は初めて見た。また米議会でのイー・ヨンスさんの証言のシーン、や米在住の日本人の様々な証言(「慰安婦問題で日本人の子どもが学校でいじめにあう!」)等々アメリカ国内の情報も。テーマ毎にこうした賛否両論について対比させるという手法が新鮮である。

 

「主戦場」プロデューサーのハタ・モモコ氏が最初、「この映画の両論併記という形には懐疑的であった、否定論者へ発言の場を与えてしまうという事に抵抗を感じないわけではなかった」と述べているが、手方として成功したのではないか。

確かに「否定論者に発言の場を与えている」部分もあるが、両論を並立させることで彼らの嘘やとんでもない牽強(けんきょう)付会(ふかい)も観客に明らかになってくる。人柄の不真面目さが露呈された否定論者もいた。

この映画の作り手の歴史認識がしっかりしているので、「慰安婦」問題の本質が誤って観客に伝わることはない。

 

    映画から伝わるもの

 

映像は安倍総理など右翼勢力が、強制連行、性奴隷等否定できない事実にクレームをつけ、「慰安婦」問題を躍起になって否定するキャンペーンを展開する姿を伝える。そして、「慰安婦」問題を否定することで、日本のあの戦争は間違っていなかったという侵略戦争肯定論へ結びつけようとするという彼らの「壮大な」戦略を描く。

しかも私が驚愕したのは、安倍総理が国内だけでなく国際世論、とりわけアメリカの市民の認識までかえようとする、恐るべき「発展性」を映画が描いていることである。日本国内からは見えにくい在外公館を使い、アメリカの教科書執筆者に対する裁判にまで関与している。この映画を多くの日本人が見てほしいと思う。

 

問題は、日本の世論が「慰安婦」問題を外国の話しとしてとらえたりもう終わった事だなどとしていることに対して、どのような有効な手を打てるか、運動を発展させられるか、である。

「慰安婦問題」をどのようにして日本人自身の問題としてとらえる世論を喚起してゆけるかが課題である。それは# Me Tooの運動であり、日本人「慰安婦」問題への取り組みにかかっていると思う。(吉川春子記)

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