監視カメラの危険性に鈍感?の日本~我がマンションも例外ではなく…
私の住む築40数年のマンションはほぼ10年間の話し合いを経て全員一致で建て替えを承認、3年前に完成し快適な居住環境にはなった。しかしいい事ばかりではない。新築なったマンションの入口3か所には夫々監視カメラが仕掛けられ常時住人を監視するようになった。
「何のために監視カメラが必要なのか?」。マンションに入るには2回のチェックポイントがあり住人といえども鍵をかざして入らねばならない。不審人物が入る余地はほとんどない。私は途中、何回かの総会で、或は理事長である夫を通じて「監視カメラ設置に反対」の意見を述べたが受け入れられなかった。
ではこのカメラは誰をチェックしているのか?居住者の行動を24時間監視するためのものと言わざるを得ない。費用は住民の自己負担である。情報関連企業の収入のプラスにはなるだろうし警察は喜ぶかもしれないが。
「日本には世界に類を見ない警察の監視カメラ網がある」と指摘するのはジャーナリストの小笠原みどり氏である。曰く、「国会議事堂の外周をぐるりと取り囲む43台のカメラは、議員面会所の前、デモ隊や個人が議員に請願書を渡していく場所も撮影している。国会は請願権、集会、表現の自由といった市民的自由が生き生きと行使され議員と市民の交流が民主主義の現場として確保されなければならない空間のはずだ。ここにも『抑止』が忍び込んでいる」(小笠原みどり著「スノーデン、監視社会の恐怖を語る」P23~27写真上)。
無数にあるコンビニエンス・ストアにも歌舞伎町にも住宅街、商店街等のいたるところに仕掛けられている監視カメラ。これのネットワーク化を、警察は「研究中」だという。恐ろしい限りだ。
史上最大の内部告発“スノーデン事件”
2013年、アメリカ政府が秘密裏に構築した国際的な監視プログラムの存在をイギリスのガーディアン紙が報じた。それを暴露したのが元CIA((アメリカ中央情報局即ち米国のスパイ機関)職員の若者だったという事実にも驚愕したが、今回映画化された「スノーデン」(オリバー・ストーン監督、2016年アメリカ・ドイツ・フランス 35分、有楽町スバル座で上映中)を見て彼の勇気に心より感動した。同時に権力組織の恐ろしさに身のすくむ思いがした。私は映画の上映を「官邸筋から1週間で上映を打ち切るように圧力がかかっている」と聞き絶対見なくてはと有楽町のスバル座に行った。
<ストーリー>(写真下・映画「スノーデン」のジャケット)
スノーデンは9.11同時多発テロに危機感を感じて国家の役に立ちたいと軍隊に志願兵として入る。しかし特殊部隊の訓練は想像を絶する過酷さで彼は大怪我をし長期に松葉杖の生活となる。担当医から「他の方法で国家に尽くせ」と除隊を宣告される。
そこで彼が選んだ道は優秀な頭脳を生かせるCIAに入る事であった。9.11後つぎのテロとの戦いの主戦場はサイバー空間にあると捉えているCIA は通信網を自在に操れるスペシャリストを必要としていた。
スノーデンはCIA訓練センターでサイバーセキュリティのノウハウを学び、そこで類い稀なるコンビューターの知識を発揮して上司から一目置かれる存在になる。そこで彼は恐ろしい国家の管理体制の存在を知る。一方プライベートではワシントンンD.C.のカフェで権力に批判的なリベラル派の女性リンゼイ・ミルズと知り合い2人の交際が始まる。
ジュネーブのアメリカ国連代表部に派遣されたスノーデンはCIAのネットワークセキュリティの維持を任された。そして非公開のはずの一般市民のメール、チャット、SMSからあらゆる情報を収集し、当該者のパソコンで盗撮まで可能なNSA(ナサ・米国国家安全保障局)の極秘検索システムの存在と、それを利用してテロ活動と無関係の人物までスパイとして抱き込むCIAの汚い手口を知ることになる。
・・・・
スノーデンはかつて自分が構築したシステムがドローン攻撃など想定外の目的に使用されている事実を知りショックを受ける。アメリカ政府の監視プログラムが拡大の一途をたどり自分と、恋人リンゼイの私生活までもCIAに筒抜けになっていることを知り、祖国アメリカを告発するとの挙に出る。
ロシアに亡命中のスノーデン
職場から重大な国家機密を持ち出して米国を脱出する若者に対して、政府発行のパスポートを無効にするという手段に出たオバマ政府。その結果、彼はロシアより先に進めなくなり、同政府に亡命を申し出て、3年間は留まる許可を得た。しかし今後、ロシア政府が米国政府へスノーデンを引き渡さない保証はなにもない、という。
元諜報部員なら「彼が米国に捕まれば裁判にかけられ諜報活動取締法違反で告発され、陪審員なしの非公開の裁判で、死刑だってありうる(「スノーデン」ジャケット・PRODUCTION NOTE)という恐ろしい運命が待っている。
元CIA職員であり、NSA(米国国家安全保障局)の職員であったエドワード・スノーデンは語る。
「僕は自分の行動によって、この人生が台無しになることをよくわかっています。けれど、僕の愛するこの世界を支配している秘密の法と不公平な免罪符そして抵抗出来ないほどの強力な行政権が一体となったものを一瞬でも世に明らかにできるなら、それで満足です。(自分の仕事や収入、安置して暮らし)すべてを手放すことに迷いはありません。なぜなら米国政府が秘密の中に構築した世界中の人々のプライバシー、インターネットの自由、そして基本的な人権を破壊するのを許せば良心が穏やかではいられないからです」と。
使命感に燃えて国家機密を持ち出した若者の前には想像を絶する困難な人生がある。
日本国民の個人情報を集めたがる政府と、共謀罪
日本には1945年の敗戦前までは治安維持法という稀代の悪法があって共産党だけでなく学者であれ、宗教であれ政府の都合悪いと見なされた思想は処罰されて内心の自由はなかった。捕まれば小林多喜二のように裁判を待たずに虐殺された者もいる。
その反省もあって戦後の大学で私は近代刑法の大原則は「犯罪は実行行為があって初めて処罰される」と法学部で学んだ。
3月21日閣議決定された「共謀罪」は3度廃案になりながら復活させようとしている。この法律は、行為でなくその前段階を処罰の対象にする。思想を処罰する戦前に逆戻りしかねない危険な法律である。
しかも政府は他方で、国民の個人情報を集める国民総背番号制実現に向けて失敗しても何度でもチャレンジしてくる。私が参議院議員に在職中は「住基ネット」の実施に金と労力を惜しげもなくつぎ込んだ。
「住基カードを持てば住民票が簡単に取得できる」と宣伝したが住民基本台帳が人生の中で何回必要になるか。相続とか、引っ越しとか限られた時しかとらない。住基ネットは2002年当時、一時稼働したが数百億の巨費を投じたまま失敗に終わり、情報関連企業は潤ったが税金の無駄使いに終わった。
今、マイナンバーの登録(カードの作成)を呼びかけている。一昨年までは税の申告に不必要だったのに昨年からマイナンバーの記載を要求している。でも、カードは作らない
方がいい。
(写真・町のカメラ屋さんに張り出された「マイナンバー申請用の顔写真撮影のおすすめ」)
免許証のない私はしばしば顔写真のついた身分証明書を要求されパスポートのコピーを持ってゆく。「マイナンバーカードは顔写真入りなので便利」とか誘惑される。
政府は公文書には秘密保護法をもうけて黒塗りのものしか出さず、一方国民の個人情報をひとまとめにネットワークにして掴もうと必死である。
公文書は隠し、個人のプライバシーは侵害する政府に物申す
公文書の秘密扱い(は止めよ、国民の個人情報を掴むな!と私は叫びたい。
アメリカ政府だけが個人情報を大量に集めて権力の恣意的利用を行っているから危険、なのではない。日本政府も膨大な個人情報を集め、ことあれば共謀罪で国民を縛る可能性は大いにある。
こうした権力に立ち向かうスノーデンよ、日本でも出でよ!何よりも、国民よかしこく、政府の意図を見破ろう!(吉川春子)
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