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2016年4月

2016年4月21日 (木)

性暴力をタブーにしない米ジャーナリズム

~ハリウッド映画「スポットライト」を観て
 

     日本のジャーナリズムが、瀕死の状態に陥る前に 

 

4月19日、国連人権理事会の特別報告者で「表現の自由」を担当する米カルフォルニア大アーバイン校のデビット・ケイ教授が、「ジャーナリストの権利保護」等について1週間の調査を行い、その結果について記者会見を行った。私は、現職時代に総務委員として電波監理や「公益通報者保護法」の立法にもかかわったので、同教授の「報道の自由」への警告を危機感を持って受けとめた。

同教授は「日本には憲法に報道の自由を保護した憲法があるにもかかわらず、報道の独立性は重大な脅威に直面している」と指摘。「『特定秘密保護法』はメディア報道を委縮させる」とし、またテレビ局の停波に言及した高市総務大臣発言の根拠となっている「放送法第4条(政治的公正性を必要とする)は廃止すべきである」と述べた。また「記者クラブは廃止すべき」として大手ジャーナリズムの閉鎖性も批判した。

また、同教授は政府の圧力による歴史教科書から「慰安婦」問題を削除した問題では「第2次世界大戦中に犯した罪の現実を教科書でどう扱について政府が介入することは、国民の知る権利を脅かし、国民が過去の問題に取り組み理解する力を低下させる」と警告した。

 

米ジャーナリズムの健在示す、映画「スポットライト」

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私は、「慰安婦」問題では日本のマスコミ報道は国民の知る権利に答えているか、疑問を持つ。

これに関し、最近私は巨大な権力と闘って性的虐待問題を白日の下に晒したアメリカの新聞記者達の映画「スポットライト」を観て彼我のジャーナリストの姿勢の違いについて考えさせられた。これは実話に基づく映画である。

20021月アメリカ東部の新聞「ボストン・グローブ」の1面に、大きなスキャンダルが報道されたのだ。内容は地元ボストンの数十人もの牧師による児童への性的虐待をカトリック教会が組織ぐるみで隠ぺいしてきたという事実である。ボストンにはカトリック信者が多く、そして同紙の読者の53%、記者達も編集長を除きカトリック信者である。教会はアメリカ人の日常生活に密着している。カトリック教会の権威は私日本人の想像できないほど強く、取材の壁は高く厚かった。

従ってこの聖職者による性暴力〈児童への性的虐待)の調査は、大きな困難を伴ったが地道にタブーに挑戦しとことん事実を暴く記者たちの粘り強い取材活動を映画は感動的に描いている。

 

 教会の神父の児童への性的虐待

 

 取材を進める中で記者達は、聖職者による虐待の被害者団体のメンバーから、「被害者は信仰を奪われ、酒やくすりに手を出し、飛び降り自殺する者もいる」と聞く。被害者から直接神父による巧妙かつ卑劣な虐待な手口と、彼らのせいで人生を狂わされた人々の悲痛な現実を知る。

 そして性的虐待を犯した神父がボストンに少なくとも13人いる」と告げられ絶句する。特定の一人の神父の虐待事件を追っていたチームは大勢の神父の罪と教会による隠ぺい工作の実態をつかむことになる。背後にヴァチカンがいる、でなければこれだけ多数の神父をかくまうことは不可能だ、との声まである。

 満を持して、教会ぐるみの性的暴力問題を報道したその日から、グローブ紙の編集部の電話は鳴りやまなくなった。被害者からの告発が殺到した。被害者の数は500人、加害者とされる神父も250人に達したという。

 グローブ紙の報道の1年後、全国紙・ニューヨークタイムズが「過去60年間に全米のカトリック教会の聖職者1200人が4,000人の子供に性的虐待を加えていた」と報じた。

「被害者の81%が男子で、22%が10歳以下だった。その場所は神父の家が40.9%、教会内でも16.5%が行われている。「神の家」のはずなのに!」(町山智浩・映画評論家『スポットライトの後、何が起こったのか』)

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(教会の性暴力隠ぺいを追及した記者を演じた俳優たち)

 

    なぜこのような事件が?

 

「神父は妻帯を禁じられている。禁欲主義で抑圧され過ぎた性欲が暴走したのでは?」と論じられている。教会自らの調査による「アメリカの司祭と助祭による性的虐待問題の性質と範囲」という報告書も発表された。

2006年ついにローマ教皇が辞任する。2002年から全世界で報告された神父によるレイプが4000件に及び、800人が神父の資格をはく奪され、2600人が職務永久停止処分を受けた。教会が支払った賠償額は26億円超である。(町山・前掲)

    アメリカの民主主義

これはジャーナリズムの力を見せつけられた事件である。数々の壁、圧力に屈せずに巨大権力のスキャンダルにメスを入れて取材し、報道する新聞社がある国、そしてこの映画はハリウッド映画で、アカデミー賞を2部門で受賞している。この事実を映画化し、興業に載せられる(ペイできる)国アメリカ。

わが国では、「慰安婦」制度の醜悪性と犯罪性が暴露されているにもかかわらず、公然化してから25年経ても未だに完全に追い詰められていない。自身の手では「慰安婦」に関わる性暴力の犯罪人を一人も処罰していない国日本。それは、もちろんジャーナリズムだけの問題ではないが、ジャーナリストにもっと頑張って権力と闘ってほしいと、この映画を見て私は思った

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   新緑を打つ雨の六義園、

 

2016年4月 8日 (金)

当ゼミナールの2016年活動方針・要旨

4月3日、「慰安婦」問題とジェンダー平等ゼミナール第4回総会で、2016年度の活動方針が吉川春子・当ゼミナール代表から、2015年度総括が棚橋昌代事務局長から、予算及び決算が原康長事務局次長からそれぞれ提起され、承認されました。要旨は以下のとうりです。

Ⅰ 2015年度総括

 安倍首相の戦後70年談話で「河野談話」の書き換えへの危惧、安倍内閣の安保法制(戦争法)案の阻止との闘いの中で、2015年度の活動は展開された。

3月末の総会は、川上詩朗弁護士による「『朝日バッシング』以降の『慰安婦』問題をめぐる諸状況」記念講演に加え、規約を改正し会費未納者への対応を決定した。2年以上会費未納の会員に対して再度支払依頼を行い、その結果未納の方は退会とするとした。会員740名ほどのうち会費未納者4割へのニュース送付が財政を圧迫している。その結果年度末で約100人が退会となり、現会員は650名ほどになっている。

ゼミナールは年2回開催した。第17回は621日吉見義明教授による「吉見裁判の意義とこれから」は裁判を控え72名が参加。第18回は1025日俵義文氏による「歴史の事実をゆがめる教科書と『慰安婦』問題」。現場の中学の先生による「育鵬社」教科書による模擬授業もあり、中学教科書採択の15年の各地の取り組み、教科書攻撃などを学んだ。熱い戦争法の闘いの直後で各種集会と重なり、内容の良さに比して参加が27名は残念だった。

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写真・沖縄へ 写真下・宮古島南静園にて

 フィールドワークは「『慰安婦』問題の視点でめぐる沖縄本島と宮古島の旅」を1127日から30日、3432名の参加で行った。沖縄全体で146ヶ所、宮古島17カ所の慰安所があった事実を学ぶ旅だった。9月に事前学習会を吉川春子代表講演で開催した。

 沖縄本島では、激しい闘い最中の辺野古を激励訪問、糸数壕では壕内の慰安所跡を見学し。現地の方から、戦時下の慰安所、戦後の基地など実態を聞く。

 

 宮古島では、地上戦はなかったが空爆と日本軍による土地接収、慰安所が民家、学校などに作られる中、同じ被害者として島民と朝鮮の「慰安婦」たちとの交流があったことなどを学んだ。彼女たちの存在を後世に残す「アリランの碑」、サトウキビ畑の中の慰安所跡など見学。ハンセン病施設「宮古南静園」も訪問。いずれも現地の方の聞き取りや当事者の方々の報告で、無残に人権が奪われた人たちの実態を学ぶ大変意義深い企画であった。この事実を広めるために報告集は43日に完成、500部販売する予定である。

 ニュースは20~24号の4回発行。会議は運営委員会3回、スタッフ会議(関東近県の運営委員参加)7回、事務局会議11回開催。

 
 

Ⅱ「慰安婦」問題とジェンダー平等ゼミナールの2016年度活動方針

 

 

<総論> 

 ⑴日韓合意と当会の運動

 

アジア太平洋戦争敗戦70年、日韓請求権協定50年の節目の年2015年も「慰安婦」問題は国政、外交 上の中心問題であり、1228日、「慰安婦」問題に関する日韓政府 の合意が行われた。

外相の記者会見ではまず「軍の 関与の下、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、日本政府は責任を痛感しており、安倍晋三首相は元慰安婦に対して心からのお詫びと反省の気持を表明する」と述べた。これは「河野官 房長官談話」の中の表現をほとんどそのまま引用したものである。また「韓国政府が設立する慰安婦支援の基金に政府の予算で10 億円を拠出し慰安婦の名誉と尊厳の回復、心の傷を癒す事業を日韓政府が協力して行う」とした。

 

 

当会は、政治決着として出された日韓合意が真の解決につながるために口先だけの「責任」や「お詫び」ではなく、これらの内容が実現するよう多くの市民とともに運動を強めていきたい。安部内閣にたいして、去る20146月、「慰安婦」問題の解決を求めて来たアジアとオランダのNGOは被害者を含めた討論をへて日本政府に提示した解決提言に沿って実行するように求める。(提言要旨は「ニュース」第22号に掲載)   

 

1は、日本軍が主体となって慰安所を計画、策定、管理した事実を明確に認めてその事実に対して日本政府の「責任」を認め、安倍総理が直接、被害者(「慰安婦」)に届く形での謝罪を表明すること。

 

2に「被害者の名誉と尊厳の回復と心の癒し」の事業は被害者の意見と承認を踏まえて行われる事、

 

最後に河野談話で約束した真相究明と、後世へ記憶を引き継ぐ為に学校教育、社会教育を確実に実行する事である。(運動方針承認後、最初のスタッフ会議で「政府への申し入れ」、「決議」を検討する)

 

(2)ジェンダー平等の実現

 

安倍内閣は教育への政治介入を強めており取わけ若い世代への教科書に圧力を加えている。安倍政権の「広報誌」と言われる「育鵬社」教科書ではジェンダー平等や人権平和などのテーマをほとんど取り上げていない。当会の目的は「慰安婦」問題の早期解決と「ジェンダー平等の実現」である。「慰安婦」制度の創設は家父長制のもとで可能だったこと、また、現在の日本のジェンダーギャップが国際比較でも顕著であることから、その是正を目的に掲げている。

 

特に最近、これに暗雲漂う事態となっている。自民党の「憲法改正草案」は個人尊重の日本国憲法を変えて、憲法24条に家族の協力義務規定を追加し、社会の単位を家族とし戦前のような家族制度の復活を狙っている。また、これを草の根からバックアップする「日本会議」が全地方自治体で組織化を終えたと報道されている(2016.3朝日報道)。

安部総理は夏の参議院通常選挙に総選挙をぶつけて一挙に憲法改正に必要な3分の2議席を衆参で獲得する戦略を描いている。当会は当初から女性への暴力撤廃問題(DV,セクハラ等)、女性の貧困等をテーマに掲げてきた。

 

当会は第9条とともに、両性の本質的平等規定(憲法24条)も改憲のターゲットにされている現状に危機感を持ち、憲法改定に抗しジェンダー平等を目指す活動に今後とも力を入れるものである

 

(3)吉見裁判支援

 

負けるはずがないと予想されていた吉見義明中央大学教授の名誉 棄損裁判は1審の東京地裁で敗訴 した。吉見教授はこの不当判決に対して直ちに控訴した。当会は全力で吉見裁判を支える。

 

 <各論>

 

1)財政の確立のための会費の値上げ

 

当会の発足時、会員を多く獲得するために1000円という低額でスタートした。独立した事務所と選任の事務局員は置かず会は全てボランティアで運営されてきた。この会費で今日までやって来られたのは一重に毎年100名を超える入会者の獲得、心ある方々からのカンパ等「慰安婦」問題とジェンダー平等を目指す当会へのご理解と、会員一丸となっての活動のたまものである。しかし会発足7年を迎える今年、財政がひっ迫し会費の引き上げが必至という状況になった。

 

〇会費1000円はニュース発行経費で消える

 

4回発行の経費は会費1年分となる。今後は経費削減と、第3種郵便(1通当たりの郵送費が62円で現在82円より20円安くなる)を取得することで郵送費の節減に努める。

 

〇会費納入者の減少

 

2015年4月1日、会員数は 665人でスタート。会費未納者は退会扱いとして会員名簿から削除した。未納の理由は納入忘れ、死亡・病気、住所移転等である。新規入会者もあり、2015年3月末会員数は年度初めとほぼ同数(644名)で迎えられる見込み。今後も会費納入を訴え、新会員を増やし会員数を維持したい。

 

 〇講師謝礼

 

2014年以来財政のひっ迫により安い講師料でお願いしてきた。今年度は適正な謝礼で講師をお招きしゼミナールの充実を図りたい。

 

 

〇活動経費の確保

 

年間会議開催は、すべてボランティアで交通費補助は1円も支出していない。しかし、これらの会議はゼミ ナールやフィールドワーク成功のために欠かせないものである。また、新しい活動家を迎え入れるためにもせめて交通費補助を実施したい(1500円を予定)。

 

(2)2,016年度 行事と会議の予定

 
                             
 

「慰安婦」問題とジェンダー平等ゼミナール年間日程表

 
 

行事等(予定)

 
 

日 時・場 所

 
 

第4回総会&記念講演(1回)

 
 

日時:201643日(日)
 
    記念講演  13:0014:45
 
    総  会  15:0016:30
 
場所:文京シビック・シルバーホール

 
 

運営委員会(4)

 
 

第1回~201643日 109:3011:30
 
2回~2016724日 9:3011:30
 
3回~20168
 
4回~201611209:3011:30

 
 

スタッフ会議(事務局会議)

 
 

1回スタッフ会議~20167
 
2回   〃   ~20168
 
3回   〃   ~201610
 
4回   〃   ~20172

 
 

「慰安婦」問題と
 
ジェンダーゼミナール(2回)

 
 

1回日時 724日(日)13:0016:30
 
場所:未定
 
21120日(日)13:0016:30
 
場所:未定

 

地方都市でのゼミナール開催の試み~新たなゼミナール参加者を獲得し、当ゼミナールを広げる。

 
 

フィールドワーク(1回)

 
 

〇日程
 
⓵案 913日(火)から9月15日(木)

 

 〇行く先(予定)~長野県松代~「もう一つの歴史資料館」,大本営跡,ケーテコルビッの版画展示のミニギャラリー,上田の無言館、阿智村「満蒙開拓平和祈念館」

 
 

「慰安婦」問題とジェンダー平等ゼミナールNEWS
 
(4回)

 
 

24号―20165月発行
 
25号―20169月発行
 
26号―201612月発行
 
27号―20172月発行

 
 

 

⑶規約検討委員会設置

 

 4回総会で会費引き上げと幹事設置の規約改正を行うが、引き続き会の機構(事務局会議、スタッフ会議の位置づけ)、運営委員の資格、共同代表制導入、ボランティア活動規定(第2条)等について規約改正の検討を行うために専門の委員会を設ける。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2016年4月 5日 (火)

第4回総会とシンポジューム

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  講演する小野沢あかね・立教大教授

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会場には各地からの参加者が

  4月3日(日)、文京シビックセンター・シルバーホールで当ゼミナールの第4回総会とシンポジュームが開かれました。当日は首都圏と北海道、青森、群馬、名古屋、大阪、京都、福岡など遠方からの参加を含めて55名が参加しました。

 

水野磯子・副代表の挨拶に続いて、シンポジューム・「沖縄のフィールドワークでわかった事」が行われました。最初に小野沢あかね立教大学教授が、《「売春婦」なら被害者ではないのか――「慰安婦」問題から見た日本社会》と題して講演。続いて昨年11月のフィールドワーク「『慰安婦』の視点で巡る沖縄・宮古島の旅」の参加者から3人の方がパネラーとして発言しました。




 ◆ 日本人「慰安婦」問題に切り込む、新鮮な講演


小野沢教授は ⑴(「売春婦」なら被害者ではない)への反論、⑵娼妓、芸妓、酌婦等もともと売春をしていて「慰安婦」となった日本女性達のライフ・ヒストリーから見えてくること。人身売買の横行する社会で「慰安婦」を選び取らされた、という点を、はじめに解明しました。

続いて、

1「『慰安婦』=公娼=性奴隷ではない」論はどう間違っているのか、

2 戦前日本の公娼制度とは何か――戦前の「売春婦」とは誰か、

3 公娼制度下の慣習が違反していたと思われる国際法と国内法、

4 当時における「公娼=奴隷」認識、という内容を述べて、

《おわりに》日常的に行われていた人身売買と奴隷制的境遇の研究が必要、★戦後も人身売買と買春する女性達の奴隷的境遇が続く、という警鐘を鳴らして講演をしめくくりました。(当ゼミナール「ニュース24号」に講演の要旨を掲載します。)




 フィールドワーク参加者3人の発言



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熱心に話を聞く参加者

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発言する井上教授

井上恵美子・フェリス女子学院教授は、兵士が負傷し死に臨んで居る同じ壕の中にまで「慰安所」があるおぞましさを指摘。またなぜ、兵士がなんの後ろめたさもなく「慰安所」に通えたのか疑問だとのべました。
 他方、「共同井戸」に行く「慰安婦」たちを「朝鮮ピー」と呼び失礼なことを言ったというが「慰安婦」の女性たちが道を歩いていられる事はほかで聞いたことがない。差別だけではない宮古の住民の人間的なものを感じたと述べ、兵士と宮古島住民との意識の違いを指摘しました。

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具島順子さん

具島順子さん(運営委員)は、本島南部のアブチラガマにひめゆりの学芸員が休暇を取ってボランティアで説明してくれた事や、真っ暗なガマの中、負傷した兵士の傍らに「慰安所」があったことが頭から離れないと語りました。また、当番兵として夜ごとに「慰安婦」を将校の下に連れて行った補充兵・高澤義人(宮古島に歌碑がある)の歌「補充兵われも飢えつつ餓死兵の骸焼きし宮古よ八月は地獄」を引用し、多くの餓死した兵と将校の格差に触れました。

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渋谷絹子さん

渋谷絹子さん(会員)は、「アリランの碑」を建立した与那覇さんは、「慰安婦」をきれいな「姐さん」と呼んでいた。住民特に子どもには差別意識がなかったのはないか。学校に通わず(学校は軍に占拠されていて、授業らしい授業はなかった!)洗脳されていないからではないか、と高校教師らしい視点で語りました。

◆ 会場からの質問に答えて


会場からは、いろんな質問が出て、小野沢教授が丁寧に答えました。

「日本人「慰安婦」で靖国神社に祭られている人はいるのか、軍属として申告があった場合は祭られると、かつて議論があったが」、

「遊女と『慰安婦』が重なっていたが話を聞いてすっきりした。こんな酷いにあわされた女性がいる話を聞いて、自分も4人の娘がいるので他人ごとではないと思った。その点からも日韓合意は(安倍内閣の態度が)許せない」

「植民地からの連行や内地から騙して連れて行ったと聞くが、日本人「慰安婦」の実数は何人か」(この質問に対して井上教授が資料から10万人という説もあると回答しました。)

「『慰安婦』時代が楽しかった」という証言は、その女性のそれまでが如何にひどい生活だったかの現れではないか。1000円の前借金の(日本軍の)肩代わりは途方もない金額を払ったという事。日本人『慰安婦』は将校相手が多く、相当の代金を支払った」

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「日韓合意」後の安倍首相発言を批判する大森副代表



  コーディネーター(吉川)
女性が当時まともに働ける場は遊郭しかなかった。港、船着き場、鉱山、飛行場建設等の公共事業…男性が集まるところ必ず遊郭があった。従って軍隊の集まるところにも「慰安所」が必要だという発想が自然に生まれたのではないか、と想像している。


 

 ◆ 沖縄の146か所「慰安所」設置は、沖縄差別の現れ   
 

国民の目の届かない海外の占領地に「慰安所」は作られ、出征家族にはひた隠しにされた「慰安所」。日本本土にはほとんど作られなかった「慰安所」が何故、沖縄には沢山つくられたのか。背景には沖縄差別、女性差別が共通してあることを感じます。

 
   カミングアウトを促す運動が必要

韓国はじめアジア諸国の女性は名乗りを上げているのに、なぜ日本人「慰安婦」は名乗り出られないのか。韓国の挺身隊問題協議会は25年前に被害女性に名乗り出るように呼びかけ、それにこたえて238名の被害女性が名乗り出ました。挺対協は「あなたの名誉回復を行い、生活も守る」と呼びかけ、そのように活動し政府も動かしてきました。

このような活動が日本ではなかった。それが、日本人「慰安婦」を名乗り出にくくしている一つの要因だと思います。

前田朗・東京造形大学教授は「被害者がカムアウトし、サバイバーとして日本政府の責任を追及する闘いの主体に自己形成できるためには、その社会の中にサバイバーを支える意識や運動のある事が重要である」と指摘しています(西野瑠美子・小野沢あかね責任編集『日本人「慰安婦」―愛国心と人身売買と―』現代書館 2015.)。


  女性差別をなくすため『
慰安婦』問題の取り組みを進めよう!

「慰安婦」問題は、女性に対する暴力の典型的な例であるだけではなく、最も悪質な女性の人権侵害です。この問題を女性人権保障の中心課題として取り組むことなしにはジェンダー平等が実現しないのではないでしょうか。国際比較でもジェンダーギャップが最も高い国である日本です。

今後とも「慰安婦」問題を通じて日本女性の人権問題を明確にしていく運動を進める必要があるのではないでしょうか。多くの問題点を一緒に考えることができた総会・シンポジュームでした。        (了)

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六義園の枝垂桜が満開に

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