それでも衆議院の安保法制審議、最終盤に見た希望
(この子を戦場に送らない)
安保法制、衆議院で強行採決
自民党と公明党は衆議院で安保法案をついに強行採決した。“まともな”全国紙には、「『違憲』批判を無視」、「審議するほど矛盾が噴出」、「不信 不安うねる」、「国土防衛▶周辺有事▶世界何処でも 自衛隊任務拡大の一途」、等の大見出しが躍る。そして社説も「『違憲』立法を許さない、安保法案強行採決」(東京7.16)、「安保法案の採決強行 戦後の歩み覆す暴挙」(朝日7.16)と厳しい内容を掲げた。
強行採決された安全保障関連法案はいわゆる一括法で、なるべく審議時間を節約するために政府はよくこの手法を使う。しかし審議は散漫になるのだ。今回も「国際平和支援法案」と「武力攻撃事態法改正案」「周辺事態法改正案」、「PKO協力改正案」「自衛隊法改正案」等々の11本の法律を一つに束ねてある。与党は審議が100時間を超えたなどというが、それぞれ重要な法案であり、1本当たりの審議時間は10時間にも満たないのだ。国民の8割が「内容をよく理解できない」と答えているのは当然のことである。
NHKニュースは繰り返し安保法案の審議時間が100時間を超えたと表示し自民党・公明党の広報役を果たした。
NHKは安倍政権の忠犬か?
大本営発表垂れ流し再来はゴメン
衆議院本会議で与党と次世代の党だけで戦争法案の可決が強行された7月16日夜7時のNHKニュースでアナウンサーは言ったものだ。
「これで『安保法制の成立の可能性が強まった』と、(視聴者に)お伝えしているのですが、60日ルールがあるからですよね」と。応えるNHK記者も「そうです」と応じた。いわゆる「60日ルール」で参議院の審議を軽視する与党の戦略を公共放送が肯定するとは何事か!
しかも7月17日の朝7時のニュースでも安倍渉アナウンサーは「今日から参議院にうつり、安保法制成立の可能性が高くなりました」と言ったものだ。国民に反対しても反対しても無駄だよ、との、メーッセージを送り続けるNHK。
安倍政権の手先と化し、公共放送の役割を捨てて去ったNHKニュースの醜い猿芝居だ。籾井勝人NHK会長が就任して以来NHK報道番組は一層権力寄りになっている。「政府が右というものを左とは言えない」との会長就任時の迷セリフどおりだ。
15日衆院特別委員会審議(締めくくり総括)を中継しなかったばかりか、夕方6時のニュースでは、委員会の強行採決を報じなかった事にはびっくりした。「安倍政治は許さない」等と大書した紙を掲げ、反対する野党議員で騒然としている委員会室。あまりに安倍内閣に配慮し過ぎ、自民党の広報部と化した感がある。7時のニュースもほんのお茶を濁す程度の強行採決にかんする報道で、自民党、公明党議員の質問からまず報道し、国会へ抗議に押し寄せる国民のデモの様子はほとんど報道しない。
私は昼間、遠出をしていたので夜10時と11時の日テレ、TBSの報道で初めて国会前が沢山の人数で、強行採決の怒りが燃え上っていることを知った。
国会に押し寄せる若者の波 憲法学者が叫ぶ『違憲立法』の声
私自身参議院議員の時は、いくつもの悪法に抵抗して委員会強行採決の修羅場をくぐり、本会議採決時は、ある時は参議院で否決し(小選挙区法案、郵政民営化法案)、また過酷な牛歩で抵抗し(PKO法案、消費税導入法等々)た。今回の国会を見て、いろんな場面がよみがえった。
同時に、今回は違うな、と思ったことがあった。それは国民の反対世論の規模と広がりが半端ではなかったことである。まず地方議会から法案審議に慎重を求める意見と集団的自衛権反対決議が多く上がったことだ。憲法学者の圧倒的多数が集団的自衛権行使容認は違憲と表明し、それは与党推薦の参考人からも違憲が表明された。多くの学者、法律実務家など幅広く反対論が上がった。
なによりも国会周辺に多くの国民が押し寄せて反対を表明したことである。瞬間的に2万5千人が国会を取り囲む形で抗議の声を上げたという事は近来にない事態だ。そして今まで行く人は中高年が多かった国会へ、若者が足を運んだ。ママも妊娠中の女性も声を上げていたことだ。映像や写真を見ても若者、男性の姿が目立つ。頼もしい。彼らを絶対に戦場に送ってはならないという国民の思いが伝わる。「デモ、これまでと雰囲気が違う」と書いた新聞もある。
舞台は参議院だ、廃案めざし津々浦々から声を届けよう!
「マスコミを懲らしめる」「国を過てるような報道をするマスコミには広告を自粛すべきだ」などの自民党議員の発言は単なる個人の思惑ではない。NHKやテレ朝を呼びつけ圧力をかけた自民党の体質から出た発言だと多くの国民は見抜いている。こうした表現の自由圧殺の意図の下でも、国民の戦争反対の思いは盛り上がったのだ。参議院に舞台はうつる。9月27日まで前代未聞の会期延長を強行して是が非でも法案を通そうとするかもしれないが、国民の平和への思いはさらに燃え上がるだろう。沖縄の闘いと呼応して、東京でも、全国津々浦々でも「戦争法案反対」の声は響き渡るだろう。
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