土井たか子さんお別れの会と、河野洋平氏挨拶
国会の銀杏並木、突き当りは憲政記念館(2014年11月27日撮影)
報道によると、9月20日死去した元社会党党首・土井たか子さんのお別れの会が、国会近くの憲政記念館で470人が参加して行われた。元首相や各党国会議員、党幹部も多数参加、ケネディ米駐日大使もメッセージを寄せた。元衆院議長の河野洋平氏は挨拶で、「政治劣化の一つの原因は小選挙区制にあるのかもしれない。…大きな間違いをした」と振り返ったという(東京新聞11月26日)。この記事を読み私は一挙にあの日の悔しさがこみ上げてきた。
女性の国政参加を促した土井氏
女性初の党首、衆議院議長等土井さんには“女性初”の形容詞がついて回る。また、女性議員を大量に当選させ、女性の国政への参加の道を開いた。私の当選当時、参院議員に共産党以外は女性議員はほとんどいなかったが、土井さんが仕掛けたマドンナ旋風以降、参議院に女性議員がめずらしくなくなった事を私も肌身で感じた。
小選挙区法案“復活”は汚点
同時に土井さんは元自民党幹事長の小沢一郎議員の推挙によって衆議院議長になり、「政治改革」に名を借りた小選挙区制導入に一役買ったことを私は忘れられない。
小選挙区制は大政党に極端に有利な選挙制度で51%の得票を得た候補が当選し、49%の候補は落選。その票は死票になる。中小の政党に議席獲得の可能性はほぼない。民意の正確な反映とは程遠い選挙制度だ。
稀代の悪法を参議院が否決!
1993年、「政治改革法案」(小選挙区制)は、衆議院でわずか5票差で可決して参議院に送ってきた。審議すればするほど民主主義とは相いれない欠陥の多い法案だとわかる。
当時私は、同法案を審議する特別委員会・理事だった。野党の自民党はこの法案に反対し共産党と「共闘」していた。しかしもともと小選挙区制導入を狙っていた自民党内には賛成派も多く時の与党から終始働きかけがあり、いつ賛成に回られるかと私は緊張の連続だった。参議院で侃々諤々の法案審議を経て議了、法案は委員会では可決されたが、本会議では票差を固唾をのんで見守る中、17票差で否決した。歴史的な瞬間であった。私は参議院本会議場の自分の席で万歳のポーズをとった。
憲法の規定では法律は衆参両院で可決しなければ成立しない。一院で否決された法案は廃案しかない。参議院で否決された法案は両院協議会を開き、これが決裂したことを両院議長が本会議で報告し廃案となる。にもかかわらず土井議長は同法が修正・可決、復活する場を設けてしまった。衆院議長一生の汚点といえる。
我が人生で最も悔しかった、小選挙区制復活
この日、忘れもしない1994年1月29日深夜、私は「朝まで生テレビ」(テーマは「小選挙区制法案廃案」)の出番を待つべくテレビ局で待機していた。しかし驚くべきことに、私たちの目の前で小沢一郎氏と河野洋平氏が「政治改革法案」修正案に合意書に署名をしている映像が映し出された。それは政府の提出した法案よりさらに大政党に有利な修正であった。
「まったく、浦島太郎になった気分だよ!」番組の司会の田原総一郎氏が、ぼやきながら舞台裏にやってきた。真夜中の番組に備えての仮眠中に情勢が一変してしまったのだ。
こうして臨時国会最終日に小選挙区制は復活した。土井議長のもと、小沢一郎氏、野党の河野洋平自民党総裁の3人の談合で廃案しかなかった悪法を甦らせた。こんな憲法蹂躙があるだろうか。一院で否決、その後の両院協議会も決裂、あとは衆参本会議に各議長がその結果を報告すれば廃案となる。あの時、報道で「両院協議会は決裂していませんよ」との土井議長の発言に私は強い違和感を持った。私は両院協議会で「協議は整わずと」委員長が宣言した現場をウオッチしていたのだ。土井氏のとんでもない発言だ。しかしこれが悪法復活の場の設定の地ならしだったのだ。
女性の国政参加を阻む壁
小選挙区制は日本女性の政治参加をさらに遠ざけた。供託金も欧米諸国の数倍、数十倍という高額でこれが女性の立候補を阻むもう一つの原因である。
今回(2014年11月)解散時の衆議院女性議員の比率は8.1%。IPU(列国議会同盟)の調査では世界の下院の女性比率で日本は134番目の低さである。今回の総選挙で女性代議士が増える見通しもない。世界100カ国で導入されているクオータ制(政党の女性候補者の比率話高める割当制)も見通しが立たない。
土井氏はマドンナ旋風で国政に女性議員を大量に当選させたが、その後小選挙区を導入し、女性の政治参加の大きな壁を作った。悪法復活の「立て役者」の一人の河野元衆議院議長(慰安婦問題の「河野官房長官談話」と同一人物)は冒頭でふれたように「大きな間違いを犯した」と反省の弁を述べた。異例の「弔辞」ともいえる。今はなき人の前でふれざるを得ないほどの大失政だ。河野氏の指摘のとおり、今日の目を覆うばかりの国会の劣化の原因はこの時に遡るのだ。(政党助成金もこの時導入された)。
11月26日、最高裁判決で去年の参議院選挙は違憲状態と厳しく指摘された。国会の責任は大きい。選挙制度を民主的制度に変える事なくして1票の格差是正はない
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