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ジャニー喜多川の性加害、日本のメディアが沈黙した理由

英国BBCのドキュメンタリー番組が暴いた、ジャニー喜多川の性暴力

 

ジャニー事務所は、日本の芸能界で大きな影響力を持ちますが創設者のジャニー喜多川氏(2019年に死去)が所属タレントの10代の少年たちに性的虐待を繰り返し行っていた事実が明らかになり大きく報道されています。しかしこれ迄はマスコミは事実をほとんど報道しませんでした。私自身、今回の『週刊文春』の報道に接する迄この問題を全く知りませんでした。

ジャニー事務所はジャニー喜多川氏が創設したスターになるための登竜門であり、多くの男性タレントを世に送り、彼らはTVや雑誌、映画、コマーシャル等で活躍しています。ジャニー喜多川氏は芸能界に於いて強大な権力を誇ってきました。彼が亡くなった際、安倍晋三総理大臣も弔意を表したほどです。

5月17日、NHKの看板番組「クロースアップ現代」で、このジャニー喜多川氏の少年(子ども)達に対する性暴力の実態が報映されました。番組はあらかじめ「性描写があります」と断って複数の被害者による生々しい性虐待の内容が語られました。番組は「喜多川氏の性加害を知りながらNHKはじめ主要メディアは報じなかった」と、自社の反省とメディア他社の名前を挙げて批判しました。女性キャスターは緊張の面持ちでコメントし、最後に絞り出すような声で「HHKは今後もこの問題にキチンと向き合います」と決意を述べました。私はその言葉に期待します。

 

去る3月、イギリスのBBC放送がドキュメンタリー番組でジャニー喜多川氏の性暴力を報道しました。番組名は「JPOPの捕食者 秘められたスキャンダル」(原題:Predaror The Secret Scandal of J=POP)。これが日本での沈黙を破る嚆矢(こうし=初めての矢)となったのです。この放送を契機にジャニーズJr.のカウアン・オカモト氏(26歳)が自分の被害を公表しました。

 4月12日カウアン・オカモト氏は日本外国特派員協会で会見を行いました。「自分はジャニーズに在籍した2012年から16年までの間(15歳から4年間)に性被害を15回から20回受けた」と証言しています(『週刊文春』2023.5.4号)。「自分と同じような被害を少なくとも3人の仲間が受けたのを知っているし虐待を受けた少年は100人ほどにのぼる」と述べました。彼は日系ブラジル人で現在はシンガーソングライターとして活躍しています(=BBC)。写真:ジャニー喜多川の性暴力のドキュメンタリー、英BBCより

Bbc

 

2005年性加害を裁判所が認定、しかしマスコミは黙殺

ジャニー喜多川氏の性暴力は単なる“うわさ”ではなく、20年も前に確定した事実だったのです。

『週刊文春』はすでに1999年にジャニ―喜多川氏の性暴力を報道しました。この報道に対してジャニーズ事務所は名誉棄損で裁判に訴えます。一審の東京地裁は『週刊文春』側が敗訴します。しかし20037月東京高裁判決は「記事はその重要な部分において真実である」と事実を認定しています。ジャニーズ側は上告しますが最高裁は2004年に上告を棄却。ジャニーズ氏の性加害について東京高裁の判決が確定します。

 この様に最高裁まで行ってジャニーズ北川氏が性暴力の加害者であると認定された後も、NHKはじめ主要なメディアは黙殺しました。なぜか?芸能界に多数のタレントを輩出し絶大な権力と金力を誇る実力者に対して日本のジャーナリズムは(『週刊文春』以外)ひれ伏したのです。ジャニー喜多川氏の性暴力を報道して報復としてジャニーズ事務所所属のタレントのTV出演が拒否され、あるいは顔写真の雑誌の表紙での使用を断られると、売り上げが落ちることを心配したからです。そして、その後もジャニー喜多川氏の性暴力は続き、被害者が出続けたのです。

大きなメディアは報ぜず、政府も国会も動かず、警察も誰も問題視せず、被害にあった少年たちは苦しみ続けていた…日本はそんな国なのです。

「イギリスの例で、未成年者への性加害が死後に明らかになった英国のテレビ司会者、ジミー・サビルは彼の罪が一度告発されると大規模な捜査が実施され、その悪意ある行為は清算された」(英紙「フィナンシャル・タイムズ」の日本特派員)。ジャニー喜多川の行為は強制わいせつ罪を構成するのではないか。起訴はおろか捜査もしないとは日本の警察はイギリスにかなり遅れをとっている。

 こうした世論を背景に、この期に及んでなおジャニーズ事務所の藤島社長は「当事者のジャニー喜多川に確認できない以上告発内容について「『事実』と認める、認めないと言い切ることは容易ではない」などとして認めようとしていません。ちなみに藤島社長はジャニー喜多川氏の姪で1999年当時は取締役に就任しており、件の裁判も熟知している人物です。

 

  性暴力をタブーにしないアメリカジャーナリズム

私は2016年にアメリカ映画「スポットライト」を見てアメリカのジャーナリズムは健全であると実感しました。

2002年2月アメリカ東部の新聞「ボストン・グローブ」紙が、地元ボストンの数十人もの牧師が児童への性暴力を行っている事実をカトリック教会ぐるみで隠ぺいしている事を掴み、入念な調査の末に大スキャンダル事件として報道しました。

 カトリックでは「神父は妻帯を禁じられ禁欲主義で抑圧され過ぎた性欲が暴走したのでは」と事件の背景に迫っています。2006年ついにローマ教皇が責任を取って辞任します。別の調査では、2002年から全世界で報じられた神父によるレイプが4000件に及び800人が神父の資格をはく奪され2600人が職務永久停止処分を受けました。(以上は「慰安婦問題とジェンダー平等ゼミナールブログ」吉川春子・記 2016.4.21)

カトリック教会と総元締めのローマ法王庁の権威・権力はキリスト教国でない日本では想像できないほど強力です。ローマカトリック教会という強力な権力にめげず事実を報道した「ボストン・グローブ」誌の記者たちの勇気に感動しました。

 それとは別の意味ですが日本社会において芸能界を支配していて、メディアに影響力を持っているのがジャニーズ事務所です。この事務所ぐるみの性暴力の隠蔽を許していいのでしょうか。曖昧なまま幕引きすることはゆるされません。日本のジャーナリズムが試されています。私達日本の国民の知性、正義、人権感覚が試されているのではないか、と思います。写真:ジャニーズ事件を報道する『週刊文春」3023.5.4号

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  フラワーデモ、日本人「慰安婦」、そしてジャニーズ

 一人も名乗り出ず、社会も権力をも批判せずに歴史の彼方に姿を消した日本人「慰安婦」の姿が、ジャニー喜多川氏の性暴力に声を上げられなかった少年たちの姿とダブります。苦しみ、孤独、周囲の無理解…

 しかし、その過去を教訓にして女性に対する性暴力を許さないと声を上げ始めたフラワーデモが今日あります。歩みはのろくとも前進している性暴力被害者の告発運動です。

日本でジャニーズ問題がどういう決着を示すのか。ジャニーズ事務所自身の甘い調査や救済措置にまかせるだけでいいのでしょうか。

 困難を乗り越えて芸能界で有名人として活躍している人もいるかもしれません。或いはこの性暴力で人生を狂わされた人もいるかもしれません。そういう人たちにも光が届くような、対策が求められているのです。あいまいなまま終わらせないために必要なのは世論の力です。問われているのは私たち一人一人の行動かもしれません。(了)

 

2023年1月 1日 (日)

見ごたえあるNHKスペシャル、松本清張、帝銀事件の謎に迫る

 2022年年末の2夜連続、ドラマとNHKスペシャル「未解決事件第9弾!松本清張が挑んだ帝銀」(12月30日)、戦後最大のミステリー帝銀事件と松本清張の戦いを初めてドラマ化、12人殺害の毒物の正体、”真犯人”何者か?日本軍と秘密部隊の闇」(テレビ番組表)は、この事件に対し漠然と指摘されていた問題に鋭く踏み込んでいて見応えがありました。日常的に「政権忖度」ニュースを流している、同じ放送局か?といぶかるようなGHQ(アメリカ占領軍司令部 1945~1952)の帝銀事件への干渉に踏み込んだドキュメントです。

    帝銀事件、私との”ささやか”な関係

 帝銀事件とは、1948(昭和23)年、つまり敗戦間もない時期、社会が混乱している時期に東京都豊島区の帝国銀行(現・三井銀行)椎名町支店で起きた強盗殺人事件の事です。白昼、銀行閉店(当事は午後3時)直後に中年の男が厚生省技官の名刺を差し出して「近くで集団赤痢が発生しGHQが行内を消毒する前に予防薬を飲んで貰いたい」と行員らを集めて青酸化合物を飲ませ、行員ら12名を毒殺し現金と小切手を奪った強盗殺人事件です。暗い世相にさらに日本中にショックを与えたこの事件では犯人として著名な画家、平沢貞道が逮捕されます。マスコミは極悪非道な人物と報道し、裁判で死刑判決を受けます。しかし平沢は獄中で一貫して無罪を叫び続け、死刑執行がされないまま1989年(平成元年)獄死しました。私は帝銀事件のあった11年後に(1959年、昭和34年)前身が同じ帝国銀行(兜町支店)に勤務していました。戦後日本の平和と繁栄を謳歌し青春真っ盛りの時代ですが、事件のあった椎名町支店とは人事交流があったのか、○○さんが…等、同じ支店の年長の行員が帝銀事件についてひそひそ話をするのを脇で聞いたかすかな記憶があります。

   松本清張はなぜ、小説(フィクション)にしたのか?Photo_20230101110001

 (写真は松本清張氏・左、と名刺交換する私(30歳代)・右、中央は宮本顕治共産党委員長)。

 NHKのドラマは流行作家の松本清張が帝銀事件の様々な証拠を入手しGHQとの関係に確信を深めてノンフィクションとして発表したいと文芸春秋社に申し入れます。しかし編集長は頑として、小説(フィクション)にするように求め、ドラマはこれに納得ゆかず苦悩する松本清張を描きます。何故、ノンフィクションではだめなのか。編集長もまた事件の背後にGHQの影を認め、彼らの暴露に突き進むと清張の身に危険が迫ることを予見し彼を守るためにフィクションで書くように強要したのです。当時から松川事件、下山事件…についてGHQの関与が疑われていました。占領を続けるために日本人の命は何とも思わないGHQが日本の警察も、検察も支配していました。果たして、清張の「小説帝銀事件」は、GHQが関与していたかどうか確信が持てないまま無力さをつぶやいて小説は閉じられます。

 NHKの番組では12人もの人が殺された凶器は裁判所が断定した青酸カリではなく、ゆっくりと毒が回る青酸ニトリュームとしています。この毒薬は731部隊と密接な関係のあった登戸研究所(川崎市、現在は明治大学のミュージアム)で開発され、敗戦時に複数の人物が持ち去りました。何のために?彼らは重大な戦争犯罪人ですから逮捕された場合に秘密保持のための自殺用でしょうか。登戸研究所の果たした役割について山田昭明治大学教授(同研究所所長)は語ります。

 犯人像について番組も示唆していますが、私は死刑囚の平沢ではなく731部隊憲兵Aに疑いを持ちました。彼は戦後は一貫して行方不明ですが昭和49年に死亡が確認されています。彼は、GHQにとっては危険人物であったでしょう

    GHQが事件をうやむやに葬った

 当時GHQは絶対的権力を持ち警察も報道機関も管理下に置いていました。その点をNHK番組は明らかにしてゆきます。初めは警察の捜査は軍関係者に及んでゆき膨大な捜査資料が残されています。このまま捜査を続ければ真犯人を捕らえられたかもしれません。しかし突然、警察の捜査の方針が転換されます。松本清張は捜査に当たった中枢人物に接近しますが、相手は頑として話そうとしません。

 GHQの作成した帝銀事件捜査報告書では「軍の機密とかかわったものについての報道を禁止する」とあります。山田教授は「分岐点に帝銀事件がある」と語ります。この事件追っていいた記者は「今君のやろうとしていることから手を引いてくれ。石井部隊(731部隊)とGHQ野関係が記事になっては困る。トップシークレットだ」と干渉されました。

 石井部隊の戦争犯罪を免責する代わりにアメリカは彼らに研究データを提供させました。その結果、731部隊の「悪魔の飽食」に携わった軍人、軍属は一等罪を免れ、戦後社会をぬくぬくと生きて天寿を全うしました。歴史修正主義に一役買い、日本の民主主義、平和主義を狂わせてきました。

 この番組の再放送は必見です。(吉川春子記)

2022年7月16日 (土)

国葬に反対

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(写真は2022年7月9日、憲法が希望と、参議院選最後の訴えをする山添候補(木のすぐ横)に聞き入る人々、東京文京区後楽園駅前)

 

 2022年7月14日の記者会見で岸田総理は安倍元総理の国葬(全額税金で賄う)を行うと述べた。昭和42年の吉田総理の国葬の時以上に私は違和感を覚えた。国葬に関する法律がないので時の内閣の思惑で如何様にもできる。しかし長期間その座にとどまっただけでは国葬にする理由は乏しい。自分の「お友達」にではなく国民一般に対する献身、成果・実績の説明を求める。

   安倍総理を「慰安婦」の強制連行問題で追及

 安倍元総理の「慰安婦」問題に対する態度は、歴代自民党政権の総理大臣の中で最悪である。1997年政府は「河野官房長官談話」に基づき、「慰安婦」問題を中学歴史教科書に一斉に掲載した。しかし当選間もない安倍氏は、それに異議を唱え教科書から削除させる運動のリーダーになった。

2007年、私は参議院議員としての最後の予算委員会総括質問で、当時の安倍総理に対し日本軍「慰安婦」の強制連行について質した。総理は強制連行にも広義と狭義があるとした。女性の家の玄関の中に入って女性の腕をつかんで連行してくるような狭義の強制連行はない、という持論を展開した。強制連行でなければ『慰安婦』にしてもかまわないと言わんばかりの乱暴な論理ではある。

 しかしそのように土俵を狭めても、総理の言う狭義の強制連行の事例はいくらでもある。例えばインドネシアでオランダ人女性を収容所に入れてそこから「若くて美しい白人女性」を慰安所に連行した例がある。これはBC級裁判で責任者の日本の将校は死刑になっている。また中国人「慰安婦」裁判でも力ずくで中国女性を「慰安婦」にした例は、日本の裁判所も何例か認定している。

私はこれらの事例は安倍総理の言う「強制連行に当たらないのか」と追及した。

何を聞いても総理は「吉川議員のおっしゃることは『河野官房長官談話』に書かれている。私はそれを認めている」と、「河野談話」に逃げ込んだ。後にあれほど饒舌になる総理が信じられない程、私の追及には短い答弁を繰り返した。

 最後に総理は「この場(参議院予算委員会)で私は「慰安婦」とされた女性にお詫びする」と述べた。私は直接女性に謝ってくださいと述べ、「総理、河野官房長官談話を閣議決定してほしい」と要求したが、「それはできない」と拒否された。

 安倍内閣は「河野官房長官談話」を亡き者にしようと画策したがそれは国際的世論が許さなかった。菅官房長官が河野談話は歴代内閣の方針であり変えるつもりのない事を明言した。皮肉な現象であるがともあれ積極的な事であった。

しかし韓国の「慰安婦」問題は暗礁に乗り上げたままである。私は「慰安婦」問題の一事をもってしても国葬にはふさわしくない人物だと思う。

     私が右翼に襲われたとき

 私は候補者時代を含めて、右翼の街宣車に直接襲われ怖い思いをしたことは何度かあった。一番印象に残っているのは、参議院議員時代私は三重県津市の野外(城跡)で行われた赤旗祭りである。名古屋方面から高速で駆け付けた右翼の街宣車を含め集会が始まる前から市中を何十台も大声で練り歩いていた。しかし警察が警備をしていてくれるので恐怖は感じなかった。

 あろうことか、私の演説途中に会場入り口の警備を突破して会場に右翼がなだれ込んできた。そして私のいる壇上に右翼の男が一人、上手から駆け上がってきた。

 その時私の脳裏をよぎったのは、社会党党首の浅沼稲次郎氏を右翼の学生山口某が襲い掛かり刺殺した情景である。壇上にいたのは弁士の私一人だった。私はとっさに反対側に走り1,2メートルの壇上から飛び降りた。そして、一緒に来ていた瀬古由紀子衆議院議員と夫君に守られて近くの図書館に身を潜めた。1時間以上も心臓は早鐘のようにうち、恐怖は収まらなかった。

 赤旗祭りがどうなったかわからなかった。右翼を排除後、主催者がやってきて最後にもう一度壇上から挨拶をするように依頼されたが、恐怖で体が動かなかった。やっとの思いで会場に引き返し、何分間か挨拶をして締めくくった。

 翌日代々木病院で診察を受け2週間の怪我の診断書をもらい警察に出した。

 後日、三重県警から事情聴取をしたいと出頭の要請が来た。国会開会中なので行けない。聞きたいことがあるならそっちから出向いてほしいと言ったら、警察と検察がきた。私の顔をみて開口一番、「あの程度の高さからとび下りて怪我をするはずがない、と思ったが、年齢(61歳)を聞いて、顔を見て理解できた」と。遠目では若く見えたらしい。(これセクハラ発言?と私は苦笑した)

 警察の報告では、あの事件で100人超の男を逮捕し、100人超を起訴した。中には少年もいた。ともかく暑い夏、柔道場を取り調べ室にしたPhoto_20220716081802のでクーラーがなく大変だった由。逮捕者の数に私は驚いた。警察からの謝罪はなかった。

(写真は私の散歩道に咲く花)

 

 暴力による言論封じ、テロ後に国家暴力化を許さない

 自民党本部の安倍氏の献花台には長蛇の列ができたという。事件直後で人々は情緒の世界にまだいる。深い考慮、検討なしに早々と国葬を打ち出した岸田総理の思惑は、国葬で国民の感情を揺さぶり一定の方向に誘導する政治的利用の危うさを感じる。死人を悼む方法は国葬しかないのか。

 一方安倍氏と元統一教会との関係も明らかになっている。かつて私はクラスメイトの娘が集団結婚式に出たまま行方不明になっているとの訴えでアメリカにいた彼女を救い出す手助けをしたことがあり、家族の苦しみを目の当たりにしている。詐欺的事件を無数に起こし多くの人々に塗炭の苦しみを強いている団体に司直の手が入らないのは有力な政治家を多数味方につけているからではないかと指摘されている。ウクライナ戦争に加えまた一つ日本右傾化の要素が加わった。

私たちは現実と歴史を直視し、日本の平和民主主義を強固にする日々の営みを怠らなことではないか。

2022年4月20日 (水)

「ウクライナへのロシアのに抗議する」決議案を、第10回総会で採択

当ゼミナールは4月17日開催した第10回総会で「ロシアのウクライナ侵略に抗議する決議」を採択しました。

 連日のニュースでウクライナの街が破壊され、追い詰められ、困りきっている人々の映像を見て、怒り心頭に発します。営々と築いてきたウクライナの文化と街並みを破壊のための破壊を連日繰り返すロシアという国、プーチンという男に対し理解不能です。ゼレンスキー大統領は「我々は外国の領土が欲しいと望んではいない。またウクライナの領土を他国にやるつもりはない」と毅然と語っています。

 ウクライナが欲しい!だからミサイルを撃ち込み、核や生物化学兵器の使用を排除しないロシア。子どもや、女性にも大きな被害が出ている。私は何もできない自分にいら立っている。NATOは武器をどんどん与えているが、それもこの瞬間必要だとは思うが、それだけで戦争は終わるだろうか。

アメリカ、EUは暴君の前に外交努力も奏功しなかった。無力なのか。結局、戦争をやめさせる力は平和を求める国際世論ではないのか。ロシアは兵を引け!の声を地球に満ち溢れるように大きくしよう。ウクライナに平和を!

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ロシアのウクライナ侵略に抗議する。日本は憲法9条と被爆国の立場で国際貢献を!

                     2022年4月17日『慰安婦』問題とジェンダー平等ゼミナール 第10回総会参加者一同

一 ロシアのウクライナ侵略に強く抗議し、1日も早い撤退を求めます。

 ウクライナのNATO加盟阻止・中立化を求めてのロシアの武力による侵略に一片の正義もありません。直ちにロシアは兵を引くべきです。

ウクライナ侵略から2か月、ロシアはウクライナの人々の住む共同住宅、学校、病院、劇場、駅…あらゆる施設を攻撃し街を廃墟としたばかりかあのチェルノブイリ原発まで攻撃しました。

国連難民高等弁務官事務所の3月30日発表によると国外避難した人は400万人を超え、国内避難した人も650万人で多くの難民を生み出しています。

民間人の死者も大幅に増えています。ウクライナ当局はロシア軍撤退に伴いキーウ周辺で民間人410人の遺体を発見したと発表しました。国際社会から強く批判されたロシアは国連人権理事会の資格停止処分を受けました。国際刑事裁判所が戦争犯罪として調査を開始しています。また4月12日、ウクライナ最高会議の人権担当者は同地で「14歳~24歳の女性約25名が住宅の地下に閉じ込められ組織的に性暴力を受けていた」と発表しました。

4月11日国連安全保障理事会でも人権団体代表がロシア兵によるレイプの被害を訴える通報が女性から相次いでいると報告し「ロシアの侵略者は戦争の武器としてレイプや暴力を使っている」と非難しました。このような国際法違反、人道に悖る残虐行為を私たちは強く非難します。

また、ロシアによる核兵器・生物化学兵器の使用が危惧されています。広島、長崎、中国大陸での731部隊の悪夢が再び現実となる事は何としても避けなければなりません。私たちは戦争の早期の終結を強く求めます。

 

二 日本政府に戦争終結のための行動を起こすことを求めます。

ロシアの侵略戦争に乗じて核共有の議論を安倍元首相と日本維新の会が主張、また今でも増え続けている軍事費の更なる増大や自衛隊の装備の増強の動きも云々され、更に憲法改悪の議論の促進を図る等、活発化する日本の軍備拡大=戦争できる国作りの動きを阻止しなければなりません。

わが国はロシア(ソ連)と国境を接する隣国で利害関係を強く持ち、過去に日露戦争、アジア太平洋戦争他何回も戦火をまじえました。今も日本の領土の千島列島を不当にロシアに奪われています。安倍内閣の時だけでも27回も領土交渉をしていますが未決着です。

政府は、ロシアの侵略行為と核兵器使用の威嚇に対してきっぱりと抗議し、被爆国として平和を求める各国と連携して1日も早く戦争を終えるための行動を起こすことを求めます。また、ウクライナから受け入れた避難民に対し短期的のみならず日本での生活の定着支援、またウクライナでミサイルの壊滅的被害を受けている都市の仮設住宅設置など復興支援を積極的に行うべきです。

以上、日本軍「慰安婦」制度により性奴隷にされた女性たちの悲劇を2度と起こさせないために、この事実を次世代に引き継ぎ、ジェンダー平等を日本の社会に確立するために活動している「慰安婦」問題とジェンダー平等ゼミナールの立場から、世界中の平和を求める人々と心を一にして、ロシア政府に強く抗議し、日本政府には平和構築のための外交を求めます。

(東京は今つつじ満開、だというのに!!)

(以上)Photo_20220420104201

2022年4月19日 (火)

「慰安婦」問題とジェンダー平等ゼミナールニュース第49号が2022年3月30日発行されました

49p1

P1 表紙

総会を417日のオンラインと対面の両方で開くというお知らせと、総会議案の簡単な紹介。それに先立って記念講演は、加藤桂木・一橋大学社会学部准教授の記念講演のお知らせです(文責・吉川春子)。また囲みで、「ロシアの侵略に抗議する」

 

P2~P8 総会議案(2021年度総括&22年度方針)についての提案

まず1号議案・総括 P2P4

49p2

2021年を振り返って(P2

新型コロナ感染拡大で被害は特に弱い立場の人、女性を直撃しています。また女性議員を増やすための「政治分野の男女共同参画法」が成立後初の昨年末の総選挙が行われましたが女性議員の数は却って前回を下回る結果に終わりました。選択的夫婦別姓は自民党内の強固な反対で実現しないなど、ジェンダー平等が進まない実態を指摘しました。

「慰安婦」問題では「『従軍慰安婦』の用語は日本軍が強制連行したとの誤解を招くとして『慰安婦』が適切と閣議決定し教科書会社に「用語訂正」を強要する暴挙を行いました。安倍内閣の下で最終的に「河野官房長談話」が歴代内閣の方針としましたがこれをなし崩しにする危険な岸田内閣の動を注視しなくてはなりません。

近年世界各地で人種差別に対し人権擁護の運動の高まりを受けてかつて植民地支配していた国々から謝罪・補償の動きになっています。当ゼミナールでは高橋哲哉東大名誉教授を講師に世界の流れと日本の果たすべき責任について学びましだ。

 

2021年度の活動(P3P4

1総会 2020年度と2021年度総会はニュースに議案書を掲載し意見をメールFAX等で寄せていただき採択するという形を取りました。2 会報誌は、コロナ禍で小集会も持てない中、会員がつながる機会を増やすため年4回発行から5回に増やしまた。

フィールドワークは靖国神社の遊就館と近くの「しょうけいかん」に19名が参加しました。

33回ゼミナールは対面方式とオンラインの併用で高橋哲哉東大名誉教授に講演していただきました。

恒例の文京男女平等センター祭りはパネル展示のみでワークショップは中止されました。

政府に対して『慰安婦』問題への取り組みと政府の「男女共同参画計画」が掲げるジェンダー平等の目標を早期に達成を要望する意見書を提出しました。

49p3

49p4

2号議案「22年度の活動の進め方」P5P8

 

49p5

Ⅰ 2022年度の情勢(P5

2021年12月安倍内閣、菅内閣と2年続きで自公政権が崩壊した結果の総選挙ですがなんと!与党が勝利し、しかも野党を標榜する日本維新の会の躍進もあって衆参で改憲に必要な議席3分の2以上を占めています。更に保守派はウクライナ戦争を口実に改憲を促進しようと危険な動きが強まっています。改憲阻止の声を早急に高める活動が求められています。

菅内閣が日本学術会議の推薦した会員105名の中6名への任命拒否や、教科書の「従軍慰安婦」の記述を閣議決定で不適切にするなど権力による思想と表現の自由に対する介入、憲法違反の行為を即刻辞めさせなければなりません。

49p6

 『慰安婦』問題とジェンダー平等社会実現のために(P5P6)

侵略戦争の加害責任を認め、真の謝罪と事実の承継を

かつての同盟国ドイツはナチスを否定することから戦後政治をスタートさせました。高橋哲哉東大名誉教授は講演でドイツの首脳が侵略した隣国ポーランド人民やユダヤ人、強制労働の犠牲者に率直に「許しを乞う」演説を具体的に引用し感銘を与えました。

これに対し日本は戦後も戦争遂行勢力が権力を握り日本の裁判所は一人の戦争犯罪者の訴追もしませんでした。アジア太平洋戦争を自存自衛のやむを得ぬ戦争としA級戦犯を合祀する靖国神社が首都の一等地に威容を誇っています。

フィールドワークで行った靖国神社に近い「しょうけいかん」には「傷痍軍人とその家族の労苦について証言、歴史資料等を保存し展示し、後世の人々にその労苦を知る機会を提供する」国立の施設です。しかし日本の加害に関する国立のいかなる施設もありません。

当ゼミナールがかつてフィールドワークで行ったベルリン、ミュンヘンには都市中心部にナチスの犯罪を検証するミュージアムや遺構が多数存在するのと好対照です。

しかも、朝鮮人労働者の慰霊碑等民間団体が建立した各地の碑についても行政から撤去要求、説明文の書き換えなどの圧力が各地で起きています。教科書で加害の事実の記述を矮小化すると同様、社会人が加害の事実について学ぶ場を奪おうとしています。

2.2015年「日韓合意」について

2次安倍内閣は米政府(オバマ大統領)の後押しもあり、朴槿恵大統領との間で日韓合意を行いました。岸田外相が共同記者会見で「当時の軍の関与にのもとに多数の女性の名誉と尊厳を深く傷付けた問題であり、日本政府は責任を痛感している」とし、安倍晋三首相は「日本の首相としてあらためて慰安婦としてあまたの苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に心からのお詫びと反省の気持ちを表明する」と述べました。韓国政府は日本の資金10億円で「和解癒し財団」を設立、7割超の『慰安婦』生存者へ支払いが行われました。政権が文在寅大統領に変わり「国民の多数が心情的に合意を受け入れられない」として「財団を解散、日本からの資金54000万円は宙に浮いています。

「日韓合意」とその後

この合意に対して当ゼミナールは2016225日ニュース23号で「今回の合意を出発点として真の解決に結びつける真摯な行為を求める」を発表、同年8月池内沙織衆院議員・運営委員と「10億円の使い道は韓国政府、同財団に任せるべき」と安倍晋三首相あてに申し入れました。

その後安倍、菅内閣は「日韓合意」の「最終的不可逆的解決」を盾に「慰安婦」問題は終わった事だとする認識を日本社会に定着させました。しかし20211月の4月のソウル中央地裁で「慰安婦」被害者とその遺族が日本を訴える裁判の判決により真の解決が行われていないことを再認識させられました。

国連女性差別撤廃委員会等の国連機関は「日韓合意」の日本政府の取り組みはなお不十分と指摘しています。岸田首相は「日韓合意」で外務大臣として韓国外相と共同記者会見に臨みました。問題解決のため韓国政府との協議を早急に行うことを求めます。

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2022年度の取り組みと予算案(P7P8

  • 憲法改悪に反対し憲法を生かす取り組みを強めます

戦争は必ず性暴力を引き起こします。「慰安婦」制度も戦争政策の下創設されました。その点からも戦争放棄の日本国憲法第9条は女性の人権規定でもあります。

  • 「慰安婦」問題解決は「河野官房長官談話」の誠実な実行によってこそ可能です。

⑴政府の、「従軍慰安婦」「強制連行」の用語が不適切との閣議決定を行い検定済み教科書の記述変更を求める事は教育への不当介入であり撤回を求めます

⑵高橋哲哉氏の講演をパンフレットにまとめます。既刊の『10年の歩み』と共に学習会資料として活用します

⑶「慰安婦」とされた女性たちの労苦を知り継承する国立ミュージアムの建設を求めます

⒊日本人「慰安婦」問題

2016~2018年にかけて行った、ビルマ従軍日本人「慰安婦」調査の結果をまとめ発表します

⒋ ジェンダー平等の日本の実現

 当ゼミナールは名前の示す通り日本のジェンダー平等社会実現を目指して活動しています。以下そのための今日的課題を列挙しています。これは今すぐに取り組むというかだいだけでなく必要な課題も含まれています。

 

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P9 本の紹介 

平井美帆著『ソ連兵へ差し出された娘達』(集英社20221月)

2017年にNHKが特集番組で報じ話題になった内容である。満蒙開拓団が日本引き上げを無事に切り抜けるため中国住民の襲撃から守ってくれたソ連兵に未婚の18歳以上の娘を団命令で差し出したとするショッキングな内容である。この事実を以前から取材していた筆者の渾身の力作。(吉川春子・評)

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P10

各地の活動 戦争展で「慰安婦」問題展示3年連続。本多孝子運営委員が婦人民主クラブ品川支部として取り組んでいる。第1回は「慰安婦」、第2回は進駐軍のための「慰安所」第1号について3回目は教科書の記述をめるって記載問題を取り上げています

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P11運営委員、監事ペンリレー「慰安婦」像を据えてフラワーデモ

 本名洋さん(運営委員・埼玉県)、本名さんは町議会議員で女性の暴力問題を議会活動として取り組んでいます。パートナーの白田真希さんと毎月フラワーデモにも参加しています

 

 

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P12 第10回総会と記念講演のお知らせ

加藤桂木先生の紹介と写真、総会会場へのアクセス、ZOOMでの視聴方法など広告も掲載されています

2022年2月 9日 (水)

『慰安婦』問題とジェンダー平等ゼミナールニュース」第48号(2022年1月20日付け)が発行されました。

 コロナ禍で当ゼミナールの活動も思うに任せずその中で、会員同士の絆を深め、情報提供の手段として、今年度はニュースの発行回数を1回増やし年5回にしました。今年度はあと1回発行します。

この48号は自分で言うのもおこがましいですが、なかなかの力作です。皆様の感想をぜひ、お寄せ下さい。

 

<ニュース第48号の内容>

 

一面 

1

〇新年号にふさわしい書、「一雨、千山を潤す」。これは禅語より書家の柴田広子さん(運営委員)の揮毫(きごう)です。

新春特集―歴史の真実を伝えるために その1

『慰安婦』問題の攻撃が教科書を通して行われています。中学校で、いろいろと弾圧を受けながらも、24年間『慰安婦』問題を教え続ける教師、平井美津子さんの寄稿です。

 

二面~三面 

P2

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1面から続いて平井美津子さんの寄稿です。

〇生徒達の感想文「アジア太平洋戦争の女性について」(2面)、「日本によって壊された人生」(3面)

〇授業で資料として使った『詩集 砕かれた花たちへのレクイエム』

〇日本維新の会 戦争責任覆い隠す異常な役割

 

四面

P4

 新春特集―歴史の真実を伝えるために その2

〇聖戦史観一色 靖国神社 遊就館 寄稿・東海林次男さん(東京都歴史教育者協議会会長)

2021年12月当ゼミナールのフィールドワークの講師を務めていただきました。その時話すはずだった内容を活字にしていただきました。「教育勅語」のコピーを資料として掲載

 

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〇東海林さんの寄稿の続き

〇このフィールドワークに参加した、埼玉県の雪田きよみさんの感想文

 

六面

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5面続きーフィールドワーク参加した、東京都の神田さよ子さんの感想

〇中帰連平和記念館が15周年迎える 加害の歴史を後世に伝える・渋谷絹子・常任運営委員

 

七面

P7

想うこと

〇橋本宏子さん「一歩進んだがまだまだ」92年の人生をジェンダー平等目指し歩み続ける

〇陶山優子さん「生きずラサから おさらば」運動を引き継ぐ若い世代の発言

 

八面

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〇運営委員・監事ペンリレー 日本軍「慰安婦」問題そしてジェンダーゼミに 菅間徹さん・埼玉県在住 常任運営委員

〇『奥十曽の春』手づくりの作品集作る 大阪 藤園淑子さんが(紹介・吉川春子)

2022年1月 7日 (金)

「慰安婦」問題とジェンダー平等ゼミナールNEWS第47号が発行されました。(2021年12月20日)

 ニュースは年間予定では1120日発行ですが、今年はコロナの影響で当ゼミナールの行事、講演とフィールドワークが年末近くまでずれ込みました。結果、11月発行ニュースではそれらの報道できないので12月に発行日をずらしました。

なお、1月発行のニュースは現在編集中で、こちらは予定通り120に日発行します。お楽しみに。

内容は

P1 

高橋哲哉氏・東大名誉教授の講演「率直に過去と向き合う世界の流れと日本の内向き政治」についての報道記事と講演を聞いた方々の感想

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P2

 子どもと教科書全国ネット事務局長、鈴木敏夫氏の「教科書と歴史用語への激しくなる攻撃」との寄稿文を掲載。民間右翼団体と維新の会の国会質問に乗じる形で、歴史研究者でもない政府による学問・研究に対する介入を厳しく批判する

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3 

『慰安婦』問題解決を目指す「紙上討論」。第2回は、運営委員の五十嵐吉美さん(青森県)の『歴史戦なんだ、と覚悟』を掲載する

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P4~P6

 P1既報の高橋哲哉氏の講演要旨を掲載する。ドイツ首脳の演説の引用はわかりやすいように赤茶色で区別している。なお、当ゼミナールは当日配布された資料と講演要旨をまとめた記録集の発行を計画している。

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P7

 その一 靖国神社博物館「遊就館」と近くにある国立「けいしょうかん」(戦傷病者資料館)へのフィールドワークの報告(常任運営委員 後藤ひろみ)

その二 文京区・男女平等センター祭りの『河野談話』パネル年間通して展示(運営委員 柴田広子)

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P8

 朝ドラとジェンダー平等 雪田きよみ(運営委員 埼玉)。運営委員・監事ペンリレー

 事務局日誌

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2021年9月28日 (火)

岡田黎子著『絵で語る 子どもたちの太平洋戦争―毒ガス・ヒロシマ・少国民』

 去る9月8日、当ゼミナール会員で広島在住の岡田黎子さんが、「後世の人々の英知によって、全人類の統合による恒久平和が完成することを頼みつつその一助となれば…」と思い本著を刊行され、吉川宛に送られてきましたので紹介します。

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この本は過去に出版した『大久野島・動員学徒の語り』(1989年12月15日発行)と、『子どもたちの太平洋戦争』(2009年12月8日発行)の2つの画集を一つにまとめて再刊行したものです。

第Ⅰ部は、ご自分が60歳の時「昭和天皇が亡くなった時に戦争にかかわった自らの体験を顧みたもの」、第Ⅱ部は、80歳の時に、「戦争へ戦争へと歩を進める国策に強い危機感を抱き、かつての太平洋戦争が国家によってどのように仕組まれ、国民がどのように洗脳されて戦争へと導かれていったか、戦争の実態がどのようなものであったか、その国情の一面について、子供時代の体験を記したもの」です。

岡田さんの可憐なこども、少女の絵ですがそれだけに無邪気な可愛い子ども達を戦争に動員し犠牲にした当時の国家の恐ろしさと怒りが伝わってきます。

 

⒉学徒動員(1944年11月)

1943年ころから筆者(広島県三原市在住)の通う忠海高等女学校では上級生から次々と兵器製造工場へ出て行った。「歩調とれ、頭右(かしらみぎ)」と号令をかけ守衛に敬礼

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⒍勤労奉仕、火薬袋縫製(1943年、昭和186月~12月)女学校高学年

勤労奉仕で忠海近くの工場へ。週2日出勤させられ発煙筒の発射用ドーナツ型火薬の袋を縫製等、後の4日は学校で授業を受ける。

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⒛気球の塗装仕上げ(19451月~2月)

 完成した球体(風船爆弾の一部分)に空気を入れ満球にして、雨などの防水用にラッカーを塗って球体部分を完成させた。塗り終わったものはたたんで箱詰めにし、大久野島での気球製作で行う立て加工はこの段階で終了、209個、ほとんど学徒たちの手で作った。爆弾等の取り付けは他所で行う。気球の組み立ては、日本国内と満州新京を含めて24カ所で製造され、9,300個が放球(アメリカ大陸へ向かって飛ばす=吉川注)された。

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27 保管庫から桟橋まで(19457月)

 毒ガス入りのドラム缶運搬作業~大八車等にドラム缶を45個積んで、酷暑の炎天下を毎日13往復、その距離は延べ約16キロ。積み下ろしに時間がかかり、朝から晩まで走り通しで運ぶ。夕刻になると、汗びっしょりの体に涙や鼻水くしゃみが出て…顔をくしゃくしゃにして走る。漏れている毒物の恐ろしさよりも、皆の顔がおかしいのでケラケラ笑いながら行き交う。学徒にはドラム缶の内容物については説明されなかった。

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29.大三島にわたって(19457月)

 大久野島から船で運ばれたドラム缶をころがして芋畑に運ぶ。ドラム缶から出る油状の毒物で手が滑るので支給されたゴム手袋の上に藁草履をはめて転がす。重くてドラム缶は女学生の手に負えなかった。高学年の中には水泡ができたり、視力が低下した人もいた。敗戦後このドラム缶は全部ほり出しされて、土佐沖の太平洋に船もろとも沈められた。

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⒉爆弾三勇士(1937年、昭和12年)小学2年生 日中戦争勃発

 1年生の「読みかた」国語(国語教科書=吉川)は、サイタ サイタ サクラガ サイタ で始まり次が ススメ ススメ ヘイタイ ススメ だった。「『爆弾三勇士』は自分の命をかけて肉弾となって敵陣を攻撃した。三勇士は軍神である」と授業で教わった。私はその後病気休学をしたとき”人間はいずれみんな死んでゆく。同じ死ぬなら戦死が一番良いな”と考えた。

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⒋提灯行列(1937年昭和12年)小学2年生

 中国の首府・南京が陥落した。村を挙げての祝意。私は勝利の意味を知らず皆と一緒に歩いた。多くの国民は日本軍が南京で何をしたかを知らなった。提灯行列には子どもも多数動員された。

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33竹槍訓練(19458月)

敗戦の色濃くなった頃、本土決戦に備えて、海辺近くの倉庫の前で、竹槍訓練があった。「前へ、前へ、後ろへ、前へ突け!」私たちのような体重30キロ余りのものが竹竿をもって米軍を倒せるのだろうか。「ズドンと一発撃たれたらおしまいなのに」と思った

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24ヒロシマへ被爆者救護1(19458月)

敗戦になり久しぶりの夏休み、まもなく被爆者救護の校長命令があり、3年生と4年生が何人か動員されました。広島駅に着くと見渡す限りの瓦礫の中に建物の壁面がちょうどお墓のようにぽつぽつと立っていた。建物がないのですぐそこに似島がみえた。しばらく呆然と立っていると蠅が群がって無遠慮にまとわりついた。

250人ほど、体育館や教室に軽症者から重傷者まで収容されていた。…人の世とも思えない惨い状態を見て私は目まいがした。”助けに来た私が目まいなんかしておれん。”と自分をふるい立たせ、目まいをのりこえて救護活動をした。3度の食事を作り、掃除。食事は1キロほど離れた兵舎にリヤカーを引いて行っておにぎりを作った

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~吉川コメント~

 当ゼミナール主催の第9回フィールドワーク(2019年11月)で、岡田さんから学徒動員で、大久野島で毒ガス入りのドラム缶の運搬をさせられた経験など、戦争中の毒ガス製造・運搬と風船爆弾製造にかかわった体験を聞き一同大変感銘を受けました。

岡田さんは「自分は加害者だった。風船爆弾が米オレゴン州に飛来して人の命を奪った」と、痛切な反省から画集を英語版でも出版して世界に送っています。そしてかつて敵国だった国の人々との間に友情が芽生えています。岡田さんの行動に私は励まされ、教えられています。

 当ゼミナールのニュース第44号で紹介した『90年の旅』を著した岡田さんは、「90年も生きた 面白かった!闘った!」と92歳の今も元気いっぱいあの戦争の実像を後世に伝えようと、頑張っていらっしゃいます。

 今、あの戦争を伝えなければと、戦争を知っている世代が衰える体力と戦いながら必死に、あちこちで頑張っている姿に勇気づけられます。

日本の平和、民主主義はこうした庶民の努力で守られてきたのです(了)

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2021年9月24日 (金)

2021年9月21日ニュース第46号を発行し、会員宛に発送

「『慰安婦』問題とジェンダー平等ゼミナールニュース」第46号を920日発行し、20日は敬老の日なので翌21日に発送しました。従来は年4回の発行ですが、コロナ禍で対面式の会議、ゼミナールが持てず、会員同士の意思疎通がはかりにくいため、今年度は年5回ニュースを発行します。

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2021年9月20日、東京・小平霊園の彼岸花

 

1面(P1)

7月に開かれた和田春樹・東大名誉教授、元「アジア女性基金」理事長ら8人の世話人のグループが企画したシンポジューム「『慰安婦』問題をnどう解決するか」の紹介と、これをきっかけにして当ゼミナールとしての同じテーマの「紙上討論」を呼び掛けています。

 

二面(P2)

件のシンポジュームの主催者・8人の世話人の論文に対する反対意見があるので、その立場を踏まえた論点整理を大森副代表が行っています。また、シンポジュームの発言者一覧の掲載と、紙上討論の意見募集をしています。

 

三面(P3)~四面(P4)

シンポジュームをオンラインで視聴した常任運営委員(原事務局次長と棚橋事務局長)の意見をまず載せています。また、第1回常任運営委員会の様子を伝えています。下段は過日執行した当ゼミナールが国に対して提出した要望書・確定版を次ページにかけて掲載しています

 

五面(P5)

運営委員・監事ペンリレーの欄は、監事の泉典子さんの随想が掲載されています。高卒後、沖縄問題に興味を持ち、街娼に声をかける米兵…基地化される日本への疑問、その後女性への暴力問題の運動に参加するご自分の軌跡が記されています。次号は別の役員が書きます。

 

六面(P6)~七面(P7)

 各地からの通信は、東京文京区の「第3回平和を願う文京写真展」(小竹紘子)、愛知戦争と平和展でシンポ開催(水野磯子)、また、過日東京の小田急線車内女性殺傷事件への抗議のフラワーデモ・埼玉県川越市(白田真希)等、ジェンダー平等、平和にむかって行動する女性達のニュースです。なおP7下段は、9月に突如、辞任表明し政権を投げ出した菅首相の教科書への介入批判です。

 

  八面(P8)

秋の行事を3つ紹介。1023日~24日は昨年中止された男女平等センター祭りが今年開かれます。1128日は、第33回ゼミナール、高橋哲哉氏の講演、121日はフィールドワークで靖国神社遊就館へ行くお知らせです

 

 

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2021年7月11日 (日)

第9回総会で確認、国に対する要望書を提出

当ゼミナールは、情勢に応じて様々なアピールを発表しまた、内閣が変わるたびに「慰安婦」問題の解決にむけた要望書を内閣総理大臣並びに衆参両院議長あてに提出してきました。野田内閣に1回、安倍内閣は2回です。昨年安倍内閣から菅内閣に変わりましたので、今回政府に対する以下の要望書を提出しました。

 なお、今年度「国への意見書」に対する意見の取りまとめが遅れた理由は、コロナ感染拡大で総会が開けず、議案書と一緒にニュース第44号に掲載して会員に送り、その意見集約がニュース第45号(2021年5月20日発行)になったためです。

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2021年7月11日、明日から第4波の緊急事態宣言。夕方4時半突如雷鳴と激しい雨が東京を襲う。そして午後7時、夏至直後で陽の長い1日、太陽が照り夕焼けが東京の空を覆った。画面下部のシルエットは六義園の森。智恵子は「東京には空がない」といったが結構東京の空はきれいだと私は思う

 

    国に対する要望書

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『慰安婦』問題とジェンダー平等ゼミナール

 

内閣総理大臣 菅  義偉 殿

衆議院 議長 大島 理森 殿

参議院 議長 山東 昭子 殿

 

私たちは会結成11年になります。第9回総会に当たり「慰安婦」問題解決と日本をジェンダー平等社会に近づけるため以下について要望します。

2月のオリンピック・パラリンピック組織委員会森会長による女性差別発言はジェンダーギャップ指数が世界第120位という日本の現状をさらけ出しました。

菅義偉内閣が昨年12月に閣議決定した「第5次男女共同参画計画」において第5分野「女性に対するあらゆる暴力の撤廃」では「女性への暴力は重大な人権侵害である」としています。そして女性への暴力の最も深刻な事例が「慰安婦」問題であることは明らかです。

国が「男女共同参画計画」が掲げるジェンダー平等の目標達成に向けて一層取り組まれること、および「慰安婦」問題解決にむけた真摯な取り組みをされることを要望します。

                 記

 1 「慰安婦」問題について

2021年18日、同421日、韓国ソウル中央地裁で韓国人「慰安婦」を原告とする裁判の判決が相次いで出された。判決主文は正反対のものであるが共通するのは「慰安婦」問題は終わっていないという事である。政府は引き続き問題解決のために真摯な努力を行うことを求める。

そしてまた、元「慰安婦」が自然年齢と共に姿を消しつつある今、『慰安婦』問題を風化さないで次世代に引き継ぐことを求める。

  • 政府が1993年に「慰安婦」問題について「河野官房長官談話」を発したように、国権の最高機関たる国会におかれても反省の決議(立法含め)を行うべきである。
  • 「河野官房長官談話」「我々はこれを歴史の教訓として直視する。われわれは歴史研究、歴史教育を通じてこのような問題を記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を表明する」と述べていることを受けて1997年にすべての中学歴史教科書に「慰安婦」問題掲載された。しかし20054月教科書から消えた。今後も歴史教科書に「慰安婦」問題を掲載し続ける事。

また、菅内閣は、去る416日の、「従軍慰安婦」の用語は女性たちが強制連行されたとする誤った理解を与えるとする馬場伸幸衆院議員の質問主意書への答弁書で、従軍慰安婦との用語を用いることは誤解を招くおそれがあり適切でないとの見解を閣議決定した。

しかしながら同じ答弁書の冒頭で菅内閣は河野談話を承継することを明確に述べている。従って河野談話が認めた「本人たちの意思に反して集められた」こと及び「官憲等が直接これに荷担した」事実を否定するかのような答弁書は河野談話に矛盾するものであり、上記答弁書の部分は撤回すべきである。

 

  • 社会教育の場である公的ミュージアムで「慰安婦」問題の展示を行う事。

「慰安婦」問題の展示を行う民間のミュージアムに対する経済的支援を行う事。

Ⅱ 女性への暴力撤廃を国の基本政策に据える

日本政府も賛成し採択された第4回世界女性会議「行動綱領」は、「女性への暴力はジェンダー平等社会実現の障害である」としている。アメリカのハリウッドから発した#MeToo運動は日本でもフラワーデモとして広がり、性暴力被害者が名乗りを上げ始めている。

  • 現代の性暴力、セクハラ、レイプ、ドメスティック・バイオレンス等の根絶のための予算を十分付けて対策を講じる事。
  • 夫婦同姓の強制、嫡出否認等家父長制の名残りである民法条項を日本国憲法第24条の趣旨に合うよう改正すること。

                          -以上―

 

«花房俊雄 花房恵美子著『関釜裁判がめざしたもの 韓国のおばあさんたちに寄り添って』(白澤社2021.2.10)~書評会